青木美希『地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」』(講談社現代新書、2018/3/15)
3.11から丸7年。すっかり報道が少なくなる中、避難指示解除が進んだ福島第一原子力発電所近隣地域で進む恐るべき事態とは?
現実を無視した「帰還」事業、弱き者への支援の打ち切り……メディアを通して見せかけの「復興」が叫ばれ、実際には、自治体の「町残し」ばかりが進み、人が消えていく実情。
震災直後から足を運び、取材を続ける唯一の大手紙記者にして、新聞協会賞三度受賞の若手女性ジャーナリストが迫る、大メディアが報じない「不都合な真実」!
目次
はじめに
第1章 「すまん」──原発事故のため見捨てた命
母親の自死/ハクビシンの棲む家/「ジュンヤ」を捜して/桜の下の涙
第2章 声を上げられない東電現地採用者
者を語れぬ人々/ふるさとだから、行くしかない/会社から秘密にされた被曝量/「損するのは現場なんだよな」/50代の無職が26%という現実/果てのない流浪の民/続く訃報、自死、冷たいまなざし/声を上げられない、だからやる
第3章 なぜ捨てるのか、除染の欺瞞
「底辺」に残された4柱の遺骨/除染作業員の怒り/プライドと差別/川に流された汚染物質/多重下請構造の深き闇/作業員たちの証言/除染ならぬ移染/「現場を押さえろ!」/マイナス2度以下の現場/驚愕の不正の実態/八方塞がりの現地事務所/届かぬ訴え/元請けゼネコンを追及する/託された思いを伝えるために書く/トカゲの尻尾切りにはさせない/動かぬ証拠/「山」が動いた/立ち上がる除染作業員/終わらぬ不正
第4章 帰還政策は国防のため
答えありきの住民懇談会/誰のための帰還なのか/原発を推進したものが避難指示解除/「町残し」を口にする首長たち/宙に浮く住民の心情/見え隠れする「核抑止力」/「現役は本当のことを話せない」/元原子力村トップクラスの告白/世界一ではない原発再稼働基準/日本の核武装可能性/米国のプルトニウム引き渡し要求/想定外の展開/日米原子力協定の延長/原子力に偏ったツケ
第5章 官僚たちの告白
都合が悪いことは隠される/2013年、がれき撤去でコメ汚染か/追い詰められる農家/摑んだ「痕跡」/住民に知らせるルールはない/絶望的なつぶやき/原子力規制委がリスクを矮小化?/「なかったこと」にしてはならない/官僚が明かす秘密の動き/”安全”に誰も責任を持たない/仕組まれた”秘密会議”/「原因不明」は再稼働のため/「東電を守る」という結論ありき/住民不在の帰還
第6章 「避難者いじめ」の真相
避難家族を襲った異変/かばんの中はごみだらけ/「避難者いじめ」の背後にあるもの/中学で再び直面した「いじめ」/見えない学校/「虚言癖」のレッテルを貼る教育委員会/「マスコミに話すな」/当事者が語る「いじめの構造」/おごらされて、ごみを押しつける/子どもなりの処世術/校長との対決/学校は「いじめ」と認識していた!/教育を生業とする者の弁明/「避難者いじめ」は大人の責任/新たないじめのカテゴリー
第7章 捨てられた避難者たち
わが子を守るための自主避難/低線量被曝のリスク/自分を責める母親たち/次第に行き詰る暮らし/打ち切りの結論ありきの住宅提供/しわ寄せはいつも弱き者に/壊れていく自己/ある母子避難者の自死/杓子定規で厳しい入居基準/若者の未来を奪うしくみ/「あの人たちって”お金持ち”なんですよ」/具体策に乏しい東京都/見せかけだけの避難者数の大幅減少/こぼれ落ちる命
エピローグ──忘れないこと、見続けること
まちのあちこちの名前が消えていく/「私たちが忘れないこと」
著者紹介
青木美希(あおき・みき)
新聞記者。1997年、北海タイムス入社。北海タイムス休刊にともない、1998年9月に北海道新聞入社。旭川と札幌で勤務。札幌で警察担当のときに北海道警裏金問題(2003年11月から約1年のキャンペーン報道)を手がける。2010年9月、朝日新聞に入社し、東京本社社会部に所属。東日本大震災では翌日から現場で取材した。2011年9月に社会部から特別報道部へ。原発事故検証企画「プロメテウスの罠」などに参加。2013年、特別報道部の「手抜き除染」報道を手がける。取材班は新聞協会賞を受賞した。